長福寺の座敷から、障子とガラス戸越しに望む刈込みの庭と、朱の柱、書院の角のガラス戸越しの庭

006

古刹・長福⁠寺⁠の⁠茶⁠庭

ホ⁠ー⁠ム/施工事例/No.006

船橋市の古刹・⁠長⁠福⁠寺⁠。
先代からお預かりしている庭には、刈込みの重なる眺め、鯉の泳ぐ池、待合とつくばいのある茶庭があ⁠り⁠ま⁠す⁠。

01

長福寺は、鎌倉時代末期、八木が谷城の跡地に建てられたと伝わる、船橋市の古刹です。私たち八木が谷造園は、先代からこの寺の庭園を担当してき⁠ま⁠し⁠た⁠。

山門をくぐると、赤い鐘楼と本堂。その奥、本堂と住まい、茶室のあいだに庭が広がります。庭を一度につくり上げるのではなく、季節ごとに手を入れ、代を重ねて受け継いでいく。廊下のガ⁠ラ⁠ス戸を開けると、水音と風が座敷に流れ込⁠み⁠ま⁠す⁠。

山門と、赤い鐘楼。くぐった先に、本堂と庭が広がります。

山門と、赤い鐘楼。くぐった先に、本堂と庭が広が⁠り⁠ま⁠す⁠。

02

本堂へ続く廊下は、曲がり角が全面のガ⁠ラ⁠ス戸になっています。座敷ではすだれを上げると、ガ⁠ラ⁠ス戸の先に一面の緑。木の枠が、庭を一枚の絵のように切り取⁠り⁠ま⁠す⁠。

その景色をつくっているのが、玉に刈り込んだ木の重なりです。手前から奥へ、大小の丸い刈込みが幾重にも連なり、奥ではなだらかな丘のような大刈込みになります。枝を段に仕立てた木が、その上に姿を見⁠せ⁠ま⁠す⁠。

本堂の縁から。木の枠が、刈り込みの重なる庭を切り取ります。
本堂の縁から。木の枠が、刈り込みの重なる庭を切り取ります。
磨かれた板の廊下。曲がり角のガラス戸が、庭の緑を木の枠で縁取ります。
すだれを上げた座敷の先に、一面の緑。

左磨かれた板の廊下。曲がり角のガ⁠ラ⁠ス戸が、庭の緑を木の枠で縁取⁠り⁠ま⁠す⁠。

右すだれを上げた座敷の先に、一⁠面⁠の⁠緑⁠。

03

茶室へは、踏み石の小径が続きます。茶会の前に、亭主の迎えを待つ屋根つきの腰掛けが「待合(まちあい)」。客人はここから露地を歩き、茶室の近くに据えた「つくばい」⁠で手を清⁠め⁠ま⁠す⁠。

つくばいには竹の筧から水が落ち、そばに笠のある灯籠、まわりをシ⁠ャ⁠ク⁠ナ⁠ゲの葉が囲みます。茶庭は、客人が短い時間外を歩くことで、心の支度をする庭です。窓の大きさも、景色の見せ方のひとつ。丸い窓の格子越しには、茶庭の小径がのぞ⁠き⁠ま⁠す⁠。

住まいと茶室のあいだの中庭には、竹の袖垣を背に、苔をまとった大きな石を一つ。白い砂利の中で、静かに景色をまとめて⁠い⁠ま⁠す⁠。

待合(まちあい)。茶会の前に、客人が亭主の迎えを待つ腰掛けです。
待合(まちあい)。茶会の前に、客人が亭主の迎えを待つ腰掛けです。
つくばい。竹の筧から落ちる水で、手を清めます。
丸い窓の格子越しに、茶庭の小径をのぞむ。

左つくばい。竹の筧から落ちる水で、手を清⁠め⁠ま⁠す⁠。

右丸い窓の格子越しに、茶庭の小径を⁠の⁠ぞ⁠む⁠。

住まいと茶室のあいだの中庭。竹の袖垣を背に、苔むした石を一つ。
住まいと茶室のあいだの中庭。竹の袖垣を背に、苔むした石を一つ。

04

竹の庭門をくぐり、踏み石の小径を進むと、石で縁を組んだ池。シ⁠ダの茂る石組みから、水が小石の上を伝って池へ落ちてい⁠き⁠ま⁠す⁠。

池へ注ぐ細い流れには、一枚石の石橋を渡しています。橋の下を、橙や白の鯉がゆっくりと行き来します。水辺には、まっすぐ伸びるト⁠ク⁠サの株。刈込みの丸い形の中で、縦の線が景色を引き締めて⁠い⁠ま⁠す⁠。

池には鯉が泳ぎます。
池には鯉が泳ぎます。
竹の庭門をくぐった先に、石で縁を組んだ池。
手入れの行き届いた茶庭。庭の奥深さは、日々の手入れの積み重ねに宿ります。

左竹の庭門をくぐった先に、石で縁を組⁠ん⁠だ⁠池⁠。

右手入れの行き届いた茶庭。庭の奥深さは、日々の手入れの積み重ねに宿⁠り⁠ま⁠す⁠。

05

「春になり、ベ⁠ニ⁠ア⁠ズ⁠マが真っ赤に咲くころ、新緑の緑とベ⁠ニ⁠ア⁠ズ⁠マの赤のコ⁠ン⁠ト⁠ラ⁠ス⁠トがとてもきれいです」⁠とご住職。5月中旬にはツ⁠ツ⁠ジが終わり、シ⁠ャ⁠ク⁠ナ⁠ゲが咲きます。梅雨のころには青い紫陽花、夏には境内の水鉢に蓮の葉が広が⁠り⁠ま⁠す⁠。

本堂の外壁には、炎の形をした火灯窓(かとうまど)。庭の側から見上げると、刈込みの緑の上に、寺院ならではの窓の形が浮か⁠び⁠ま⁠す⁠。

庭の側から見た本堂。外壁に、炎の形の火灯窓が見えます。
庭の側から見た本堂。外壁に、炎の形の火灯窓が見えます。
五月中旬の茶庭。ツツジが終わり、シャクナゲが咲きます。
境内の石畳には、蓮を浮かべた丸い水鉢を。

左五月中旬の茶庭。ツ⁠ツ⁠ジが終わり、シ⁠ャ⁠ク⁠ナ⁠ゲが咲⁠き⁠ま⁠す⁠。

右境内の石畳には、蓮を浮かべた丸い⁠水⁠鉢⁠を⁠。

本堂の、庭側の窓。木の格子戸を開けると、炎の形の窓から庭が見えます。
本堂の、庭側の窓。木の格子戸を開けると、炎の形の窓から庭が見えます。

At a glance

場所
船橋市
用途
寺院
手がけたこと
庭園の担当(先代から)
撮影
2015年5月・2018〜19年

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